総合危機管理学会(SIMRiC)通信 No.6    2019/4/25

 SIMRiC通信の第6号を発行いたします。
既にご案内のとおり、「総合危機管理学会 第4回学術集会」のテーマは「AIが総合危機管理を支援するツールと成りえるのか?」です。佐藤幸光 学術集会大会長より、大会開催にあたってのメッセージが寄せられておりますので、是非お読みいただければと存じます。また、今回の巻頭エッセイは、AIに関連したものとなりました。AIは、会員それぞれがご自分の立場、役割や業務等により、多様なかかわりをもたられていると思います。今回の学術集会は、我々の学会自体、そして皆さまの研究や仕事自体のAIの今後を探る、大変おもしろい内容になると期待されます。是非、奮ってご参加・ご発表・問題提起等々をしていただければと存じます。
このSIMRiC通信は、学会員の皆様による時宜を得たエッセイをはじめ危機管理に関する意見や提言などを通じて活発な議論の一助や行動に繋がることも期待して発刊しております。是非、投稿等、どしどしお寄せ下さい。(常務委員会)

◇コンテンツ◇
1 【総合危機管理学会「巻頭エッセイ」】(木村栄宏)
2 【学会からのおしらせ】
   (1) 第4回総合危機管理学会学術大会に寄せて(佐藤幸光)
   (2) 第4回総合危機管理学会学術大会プログラム
 (3) 学会誌「総合危機管理」編集委員会報告
3 【危機管理にかかわる他学会、他組織での関連イベント・行事等】
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1 <総合危機管理学会「巻頭エッセイ」>

●AIを前提として                                       千葉科学大学 危機管理学部 危機管理学科 教授 木村 栄宏

 「第4次AI(人工知能)ブームは今後来るのでしょうか?」と言うと、「今現在がAI第3次ブームにあたっていますよ、一体、何言ってるんですか」と突っ込みが来るだろう。
AI第1次ブームは1950年代後期から1970年代にかけて生じた。コンピュータの進化の始まりの時代、そして映画「2001年宇宙の旅」(1968年4月)で人工知能のHAL(そのネーミングは、IBMの3文字をアルファベット順でそれぞれ1字戻して決めた?といわれましたね)の暴走で人類の未来への恐怖と不安が提起された。
 AI第2次ブームは、エキスパートシステム(AIプログラム)の進化により1980年代に生じたが、例えば第5世代コンピュータプロジェクトを開始した日本ではバブルの崩壊と共に終焉した。
 AI第3次ブームは、ディープラーニングを核に2006年頃から始まった潮流が、2016年に囲碁対戦用AI(グーグルの子会社作成)が人間のプロ囲碁棋士に勝利したというニュースで社会にインパクトを与えると、その後続々とAIによる成果が登場し、社会現象となった。この間、未来学者のレイ・カーツワイルが2005年に技術的特異点(シンギュラリティ)を提唱、2013年にはOXFORD大学オズボーン准教授とフライによる論文で「10年後には全職種の49%がコンピュータリゼイションの影響を受け消滅する」といったように、AIは人間の仕事を奪うという警鐘などの議論が生じた。なくなる仕事の代表が「テレマーケター(電話販売員)」や「手縫いの仕立て屋」や定型業務を行なう仕事などであり、AIに奪われず残る仕事の代表が「危機管理責任者」「メンタルヘルス・薬物関連ソーシャルワーカー」といったものとして、この論文は有名になった。(注:但し、「シンギュラリティ」も「AIが仕事を奪う」ことの双方とも現在はそれらが生じる可能性についての反論の方が優勢となっている)。
 そして現在、AIを巡る議論、AIを活用した新製品や新サービス、あるいは改善など、極めて多様・多彩な議論がかなりの勢いで活発となっているのは周知のとおりだ。危機管理に少しでも関連するニュースを最近の事例(先月から今月にかけて)でいくつか見ても、
・「AIアナウンサー24時間働けます」朝日新聞2019.3.5.朝刊37面(災害情報を伝える手段)(災害情報を4つの外国語に翻訳し自動発信する実証実験)(神戸市)
・「自然災害 被害予測に力点」損保大手、AIで気象分析 日経新聞 2019.3.5.朝刊7面
(米国で既に導入、ハリケーンや山火事が接近する前から進路や被害を予測、損害調査の時間を短縮し、保険金支払いまでの手続きを円滑化(米AIGグループ))(注:しかし、地震などの災害がいつ発生するかまでは予測できないが)
・AIによる超高速の為替自動取引(注:システムによる高速取引は従来から実施されてきたが)
・遺伝子解析で出生操作、出生前診断による命の選別だけでなく操作した人間ができてしまう(遺伝情報を容易に改変できるゲノム編集を受精卵に施して子が誕生した)という発表(2018年11月中国)(注:ノーベル文学賞受賞のケン・石黒「私を離さないで」の小説も想起される)
・AIの判断 救いか災いか 犯罪予測 偏見助長の指摘 朝日新聞2019.3.24. 朝刊1面(注:米国ロサンゼルス警察の取り組み。黒人というだけで逮捕されるなど、偏見に満ちた人が作るAIには偏見があるのでは、や、日本でも京都府警で新年度からこうしたAI予測を導入、等)
・AIは地方を救うか 日本経済新聞 2019.4.1.朝刊23面(時流地流)(注:自治体によるAI導入の広がりに関する知見)
 といった具合である。災害に強い都市最先端のAIが見守る都市として東京都豊島区は総合防災システムを構築したり、AIによる監視システムで犯罪抑止といった社会生活係わる危機管理分野だけでなくAIを使った防衛や武器など、安全保障分野までその対象は多岐に亘る。
 元々、「第何次ブーム」という言い方は、日本ではベンチャーブームやIT革命といった際に使われてきたが、クライテリアや階層が上がる場合は1.0、2.0、3.0といった言い方がされている。AIの場合は、もはやブームというものではなく、“自動車事故をなくすには自動車自体を失くせばよいのではなく自動車という存在を前提として危機管理を行なう”と同様(「自動運転」も自立走行車(人間が完全に運転に関わらない事)であれば極めて安全だが、その段階に辿り着く前の移行期間が危険(NewsWeek日本版 2019.3.26.号P39「墜落事故が示す自動運転車のリスク」より)、AIは社会に浸透し、AIを前提とした社会(技術の進歩とはそういうもの)になっているということだ。つまり、冒頭で示した「第4次AI(人工知能)ブームは今後来るのでしょうか」という問い自体が意味がなく、「ブームではなくインフラと化す」という認識の時代になっている。
 しかし、AI以外のIoTやFintech、という新技術が今に至る(社会に浸透してくる)までには、世界は時代のあだ花と言いたくなる、痛い経験もしてきた。ロケット・サイエンティストをはじめとする優秀な科学者たちは、金融の世界に大量に入っていくことで金融工学を作り出し、それはデリバティブ(金融派生商品)開発を加速させ、リスクを切り売りしコントロールすることに一旦は成功してマネー資本主義を人々は謳歌したものの、CDSという金融工学を駆使した金融商品に端を発する、サブプライムローンそしてリーマンショックによって金融恐慌がもたらされたことなどがひとつの例として挙げられよう。
 新技術の進行に対しては、技術に対する信頼がなければ人は安心しないが(前回の本学会学術集会での議論を是非ご参照下さい)、今後のAIの進展の過程で上記のような痛い経験をするだろうことも「前提」とすべきだろう。今後の社会が、自動車のメカニックや最新技術や構造を知らなくても我々が生きる前提として「疑問も持たずに普通に」利用しているように、AIも「信頼と安心」をもたらす社会「ツール」として我々の生活に溶け込むということだろうか。

2【学会からのお知らせ】

(1)第4回 総合危機管理学会 学術大会に寄せて                       

   大会長 佐藤 幸光(人間総合科学大学)

学術大会テーマ: 「AIが総合危機管理を支援するツールと成りえるのか?」

 近年、医療分野をはじめ、さまざまな分野でAIを活用した事例が紹介されています。保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書によれば、AI(ディープラーニング、機械学習等)により、(1) 新たな診断方法や治療方法の創出 (2) 全国どこでも最先端の医療を受けられる環境の整備 (3) 患者の治療等に専念できるよう、医療・介護従事者の負担軽減 を実現するといったことが検討されています。第4回学術大会では、午前の部での教育講演のテーマとして、「医療分野におけるAIの最前線―AIで医療は変わるのかー」と題して、馬込 大貴先生(駒澤大学 医療健康科学)をお迎えし、最新の知見を含めて、大変興味深いお話を拝聴できるものと思います。一方、午後の部のシンポジウムでは、「AI活用による総合危機管理」と題して、4名のシンポジストからそれぞれの専門の立場から、AIの活用による総合危機管理の視点より、今後の取り組むべき方向性や展望などについて話題を提供していただき、全体の討論のなかで本会に参加される皆様とともに、議論を深めていくことができればと考えております。本学術大会において得られる種々の提言や知見が、日々のさまざまな場面での危機管理を進めていくなかで、大いに活用されていかれることを希求しております。
 会員諸氏をはじめ、多くの皆様方のご参加をお待ちしております。

(2)第4回総合危機管理学会学術大会プログラム 

日時   : 2019年5月26日(日) 10:00 ~ 17:30
場所   : 東京理科大学 神楽坂キャンパス  (〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3)
学術集会会長: 佐藤幸光(人間総合科学大学 人間科学部)
学会テーマ:「AIが総合危機管理を支援するツールと成りえるのか?」
参加費:会員 3,000円  非会員 5,000円  学生 無料
(※参加費等のお支払いは、学術集会当日受付にてお願い申し上げます。)
懇 親 会 費:5,000円
事前参加申込締切:5月17日(金)
お問合せ先:総合危機管理学会 事務局
  〒288-0025千葉県銚子市潮見町3番
   TEL:0479-30-4636 E-mail:info@simric.jp
参加を希望される方は、大会ホームページ( http://simric.jp/conference)の参加申込みのページより参加申込をお願いします。
事前参加申込を頂いた方には、要旨集(PDF)を会期前にE-mailで送付します。
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大会プログラム
9:00    受付開始
10:00~10:30    開会挨拶(総合司会:三村 邦裕)
総合危機管理学会会長 木曽 功(千葉科学大学 学長)
学術集会会長  佐藤 幸光(人間総合科学大学 教授)
10:30~11:30    教育講演(司会:佐藤 幸光)
『医療分野におけるAIの最前線-AIで医療は変わるのか-』
     馬込 大貴(駒沢大学 医療健康科学部 講師)
11:30~12:30 休憩
12:30~13:50    一般発表 (司会:佐藤庫八、嶋村宗正)
①    古積 博「消防法危険物の爆発危険性」
②    柴田 伊冊「空港の危機管理」
③    柳田 信也「消防隊員の暑熱環境下におけるアイススラリー接種による身体冷却効果」
④    中村伊知郎「オーバーツーリズムと定住外国人の流入に関する問題」
⑤    佐藤 和彦「オールハザードに対応する総合災害対応訓組織」
13:50~14:20    総 会
14:20~15:00 基調講演 
『自然災害における危機管理の果たす役割と実践的方策』
     松田 学(元東京大学大学院客員教授)
15:00~15:15    休 憩
15:15~17:00 シンポジウム (司会:佐藤幸光、木村栄宏)
「AI活用による総合危機管理」
①    奥山 康男「AI活用による医療安全対策と実践」
②    山舘 周恒「AI活用による感染対策と実践」
③    仲西 宏之「防災における情報伝達方法のあり方とAI活用」
④    高坂  匠「防災における情報伝達方法のあり方とAI活用 実践編」
17:00    閉会挨拶  佐藤 幸光(人間総合科学大学 教授)
18:00    懇親会 会場:理窓会倶楽部(東京都新宿区神楽坂2-6-1PORTA神楽坂6階)

 (3) 学会誌「総合危機管理」編集委員会報告【進捗報告および学術論文投稿のお願い】

 昨年5月に開催した総合危機管理学会学術集会の内容を中心とした学会誌「総合危機管理」の第3号が学会HP(http://simric.jp/journal/)にて公開されております。
また、学会誌「総合危機管理」では、随時学会員の皆様よりの学術論文の投稿を募集しています。ご投稿いただいた学術論文は査読手続きを得て、掲載が受理されたものより随時「総合危機管理」へと掲載いたします。投稿規定などは学会ホームページ(http://simric.jp/journal/information-authors/)で公開しておりますのでご確認ください。皆様の論文投稿を編集委員一同お待ちしております。

3 【危機管理にかかわる他学会、他組織での関連イベント・行事等】

○第23回サイバー犯罪に関する白浜シンポジウム(シンポジウム、情報危機管理コンテスト)
・主催:サイバー犯罪に関する白浜シンポジウム実行委員会
・日程:2019 年5月23日~5月25日
・場所::和歌山県立情報交流センター Big・U
・詳細:http://www.riis.or.jp/symposium23/

○第44回(2019年度)地域安全学会研究発表会(春季)<一般論文発表会>
・主催:地域安全学会
・日時:2019年5月24日(金) 13:00~16:30 
・場所:木曽町文化交流センター 2階多目的ホールほか(長野県木曽郡木曽町福島5129)
・詳細:http://isss.jp.net/?page_id=81

○日本危機管理学会第28回年次大会
・主催:日本危機管理学会
・日程:2019 年5月25日(土)10:00~16:30
・場所:東京都中小企業会館8階
・統一論題:「新冷戦時代に求められる危機管理」
・詳細:https://crmsj.org/

○産業・組織心理学会 第133回部門別研究会
・テーマ:ノンテクニカル・スキル/レジリエンス・スキルの教育訓練
・日時:2019年5月25日(土) 14:00~17:00(予定)
・場所: 日本大学経済学部(JR水道橋駅から徒歩3分)3号館7階3071教室
・参加費:無料、申込み:不要
・企画・司会:芳賀繁
・共催:日本人間工学会安全人間工学委員会,日本認知心理学会安全心理学研究部会
・詳細:http://www.jaiop.jp/event-info/1148.html

○日本応用心理学会第86回大会
・主催:応用心理学会
・日時:2019年8月24日(土) ~8月25日(日)
・場所:日本大学商学部(東京都世田谷区砧5-2-1)
・詳細:http://congress.j-aap.jp/2019/index.html
 

◆会員に周知や紹介したいイベント・行事等がございましたら、行事名、主催、日時、場所詳細リンク先 等を、総合危機管理学会事務局(info@simric.jp)までお送り下さい。

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総合危機管理学会 事務局

 千葉県銚子市潮見町3  千葉科学大学危機管理学部内

 email info@simric.jp, tel 0479-30-4636, fax 0479-30-4750

   http://simric.jp/