総合危機管理学会(SIMRIC)通信 No.10(特別版)  2020/03/31

 

今般、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった方に心より哀悼の意を表しますと共に、現在感染で苦しんでいる方にお見舞い申し上げます。併せて、日々、この感染症に対して対応されておられる医療従事者をはじめとするすべての方々に対して、深く敬意と感謝を申しあげます。

 今回のSIMRiC通信では、特別版として、新型コロナ感染に対する知見を本学会会員であり医師である黒木常務委員による投稿を掲載致します。あくまで学会としての統一見解ということではなく、会員個人の見解ですが、緊急性に鑑み、配信させていただきます。

 また、分科会活動準備のための打ち合わせを実施致しましたので、併せて掲載いたしました。会員各位のご協力等、よろしくお願いいたします。              (常務委員会)

(SIMRiC通信では、危機管理に絡む多様なエッセイやコラムを、会員の皆様から募集しております。論文にする前の研究ノート的な内容でもかまいません。是非、事務局まで、気楽にご投稿いただければと存じます。)

◇コンテンツ◇

1 【総合危機管理学会 コラム】

・COVID-19にならないために            (黒木 尚長)

・COVID-19が新型インフルエンザになる日  (黒木 尚長)

2 【総合危機管理学会からのおしらせ】

   ・ 分科会活動について

【総合危機管理学会 コラム】

COVID-19にならないために

黒木尚長(千葉科学大学 危機管理学部)

 

抄 録

 ウイルス感染症に罹患しないためには、人と接触するときは必ずマスクをつけ、マスクを外すときに手を洗うことを徹底すればよい。COVID-19にはアルコール消毒も効果がある。陽性者のすべてで、ウイルスが口・鼻・眼から侵入し感染したと思われる。都市閉鎖や外出禁止だけでは、COVID-19を収束できない。

 

1. はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が現状(3月30日)では、ほぼ、感染蔓延期に移行したと思われる。3月24日より感染者(PCR検査陽性者:以下、陽性者)の増加が特に都市部で加速しているからである。その原因に、感染経路を追えないケースの急増がある。感染拡大防止のカギとなる「クラスター(感染者集団)潰し」には限界があり、個人レベルで絶対に感染しないように自衛策をとる必要がある。単純に外出しなければ、それはそれでいいのであるが、他にも方法はある。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は飛沫感染と接触感染によりうつるといわれている。つまり、『手洗いと咳エチケット等を徹底』すれば、陽性者になることはない。逆に、陽性者は、『手洗いと咳エチケット等を徹底』していなかった人の証しなのである。

 

2. ウイルスは見えない敵

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染制御のターニングポイントは、1月31日であった。『症状ない帰国者2人感染 新型肺炎、厚労省「想定外」』の記事の中で、厚生労働省は30日、チャーター機の第1便で帰国した日本人のうち3人が感染していたと発表した。このうち2人は、発熱やせきなどの症状がない国内初の感染例だった、とある。このような状況下では、インフルエンザと同じく、感染源不明の患者が多数出現し、指数関数的に増加する可能性があることを意味し、無症状病原体保有者が特定できない以上、有効な対策がとりづらいことを意味する。

 

3. 感染対策の基本

感染予防策には大きく分けて,標準予防策(スタンダードプリコーション)と感染経路別予防策がある。標準予防策は感染症の病態にかかわらず,すべての傷病者に対して行われる感染予防策である。標準予防策は,患者の血液,体液(唾液,胸水,腹水,心嚢液,脳脊髄液等すべての体液),分泌物(汗は除く),排泄物,あるいは傷のある皮膚や,粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで,患者と医療従事者双方における病院感染の危険性を減少させる予防策である。手指衛生(手洗い,または手指消毒)がすべての医療行為の基本となり,感染防止に対して一番大きな役割を果たす。その上でマスク、ガウン、ゴーグル、手袋などの個人防護具を使用する。

 

4. 感染がおこるパターンとその解釈

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は飛沫感染と接触感染によりうつるといわれている。

1) 飛沫感染

咳やくしゃみ,会話,気管吸引,呼吸などにより,直径1~100μm程度の大きさの飛沫粒子(エアロゾル,微小な空気中で浮遊できる粒子)が放出される。

直径5μm以上の大きな飛沫粒子により感染を起こすものを飛沫感染といい,約1mの距離内で濃厚に感染を受ける可能性があり、2m離れると落下したり、乾燥し感染性を失うため感染しないとされる。サージカルマスクをしていれば、予防できる。

2) エアロゾル感染

 粒子が大きいほど、中に含まれるウイルスが多いため感染性が高く、乾燥しにくいことは言うまでもないが、湿気のある密室では、5~10μmのエアロゾルや呼気の大半を占める1μm程度の小さなエアロゾルは、空気中に浮遊し、数分から30分程度,感染性を保持する。これがエアロゾル感染という。小さなエアロゾルほど、浮遊しやすい結果、吸気により深く気道に達しやすいため、感染力は高いとされる。なお、1μm程度の小さなエアロゾルは、直径5μmまでの粒子を除去できるとされるサージカルマスクをも通過する。エアロゾル感染を起こさないためには、乾燥と換気が必要である。

3) 接触感染

病原体との直接接触あるいは環境表面や医療器具などとの間接接触によっておこる感染をいう。ウイルス感染の場合、感染者がくしゃみや咳を手で押さえ、自らの手で周りの物に触れると感染者のウイルスが付き、未感染者がその部分に接触すると、ウイルスがうつります。そのウイルスが口・鼻・眼から侵入してはじめて感染が成立し、それを接触感染という。接触感染が成立するためには、飛沫感染やエアロゾル感染と比べ、より多くのウイルスを必要とするとされるが、プラスチックやステンレスに付着したウイルスの生存期間は3日以上、段ボール紙で1日以上と言われており、接触する機会が多いほど、感染の可能性が高くなる。

感染場所の例として、不特定多数が接触する、電車やバスのつり革、ドアノブ、エスカレーターの手すり、(エレベーターなどの)スイッチなどがあげられる。テーブルやタクシーの運転席・助手席間のコンソールボックスのほか、陽性者の所持品にも注意が必要で、スマートフォン、タブレット、パソコンキーボード、さいふ、小銭、紙幣、クレジットカード、ペンなどの筆記用具、箸、スプーン、コップ、歯ブラシ、カバンなど、ありとあらゆるものに最大で3日以上付着しているとことになる。特に、食事中でも触っているスマートフォンは、1番の温床になると考えられ、接触感染を防ぐには、手洗いだけでなく、スマートフォン画面の清掃も重要と考える。

4) 陽性者の感染経路についての解釈

 海外渡航者以外の陽性者は、当初、武漢市からのツアー客を乗せたバス運転手、そのバス運転手と共に食事をしたことのあるバスガイド2名、そして、タクシー運転手数名であった。しかし、2月18日以降では、タクシー運転手の感染はほとんどみられていない。十分な手洗い、アルコール消毒、換気などの感染対策が行われた影響なのかもしれない。2月25日以降、知られるようになったクラスター感染は、屋形船、ライブハウス、ライブバー、展示会、スポーツジム、卓球スクール、医療機関、福祉施設などでみられている。

 飛沫感染であれば、陽性者に心当たりがあると思われ、そのような状況を作った本人に非があると感じているであろう。

 今回の陽性者の感染経路のほとんどは、エアロゾル感染ではないかと考えている。

換気のない湿気のある室内に多くの人が集まると、集まるだけで湿度がより高まる。高温多湿の日本には、そもそも乾燥した室内など存在しないのだから、除湿機のない換気のない室内であれば、エアロゾル感染は簡単に起こると考えるべきである。

タクシー、バス然り、屋形船、ライブハウス、ライブバー、展示会、スポーツジム、卓球スクールなどのクラスター感染、加えて、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染もエアロゾル感染が主と考えた方が良い。残りは接触感染で説明できるはずである。

食事中の感染例が多くみられ、自宅室内や飲食店の個室などで発生している。これもエアロゾル感染の可能性が高く、家庭内感染の多くもエアロゾル感染と思われるが、スマートフォンによる接触感染も少なからずあるのではと考えている。

 医療機関や福祉施設でクラスター感染が多発しているのを不思議に感じるかもしれないが、予期せぬ、無症状病原体保有者が福祉施設や医療機関に紛れた場合、職員間でも必ずマスクをつけた上で接触感染にならない対応をしなければならない。そこにほころびができるだけで、潜伏期が1~14日と長いことから、知らず知らずのうちに爆発的に患者は増えてしまう。その意味では、外出禁止令を強制しても、例外を認めてしまうと、結果としてCOVID-19は、院内感染が多発してしまい、収束できないものと思われる。これらの多くは、ドアノブや電子カルテ、記録簿などを介する接触感染と思われるが、前述した感染様式で感染したことは確実である。マスクをしていないと、会話だけでも、ウイルスが飛沫感染でまき散らされる。いずれにせよ、口・鼻・眼のいずれかにウイルスが侵入したために感染したのである。

 

5. ウイルス感染が起こるイメージ

接触感染では、ウイルスが3日も生存することがあるため、陽性者では、手と所持品の間を行き来する可能性が高く、これが潜伏期に影響するのかもしれない。特にスマートフォンが危ないと感じている。持ち込んだウイルスは、手に付着し、スマートフォンの画面上で生き続ける。したがって、手洗いだけでなく、スマホ画面をアルコールでふいておくべきである。食事中にスマートフォンを使用するのは大変危ない。

接触感染を気に留める人が少ない感があり、十分な手洗いをしている人が多いとは言えない。そのような危険な状況にもかかわらず、COVID-19患者は、インフルエンザと比べると患者数ははるかに少ない感がある。それは、コロナウイルスの増殖力によると思われる。感染して増殖を終えるまでの感染性ウイルスの産生量はインフルエンザウイルスの約1/100程度と推測されるといい、それをそのままあてはめれば、インフルエンザと比べると100倍程度感染しにくいと考えられる。濃厚接触者の陽性率がクラスター感染と比べ少ないことを踏まえると、感染力の試算は正しいように思われる。

つまり、COVID-19は、飛沫感染もしくはエアロゾル感染で高率に発症し、接触感染では、発症率は低いが、接触感染が繰り返しみられるため、ある程度の発症はあると考える。

 

6. 自分が無症状病原体保有者であった場合、とるべき行動とは!?

現状では、いつ、自分が無症状病原体保有者からウイルスをもらってもおかしくない。そうなった場合に備えて、外出時には、顔にウイルスが絶対に付着しない自衛手段を確立しなければならない。

日常生活上、ウイルスが付着する可能性のあるものに触れざるをえず、ウイルスと接触する可能性は高い。手袋でも予防可能だが、ディスポーザブルのものを使用しない限り、手袋に付着したウイルスに触れる可能性が高い。つまり、頻回の手洗いは感染を予防できる。また、コロナウイルスはアルコール消毒でも効果がある。

マスクを外すときに必ず手洗いをすれば、顔を触ったり、飲食をするときにウイルスが目・鼻・口に侵入することはない。いつも手に付着しているウイルスを最小限にとどめられるので、うつす可能性を最小限にとどめられる。それでも物に手を触った直後に必ず手洗いをするわけではないので、手洗いやマスクをしていても感染することはゼロにはできない。スマホの画面はウイルス増殖の温床になるので、アルコールで拭いた方が良い。マスクをつけてから手洗いをすれば、自身にウイルスが付着しているのは、あったとしてもマスクだけに限られ、その後、いろいろなものを触った際に、ウイルスが手に付着する可能性がある。

 

7. 都市閉鎖や外出禁止でCOVID-19は収束するのか?

潜伏期をこえる2週間以上、外出禁止を続ければ、理論上収束できる。ただし、事実上外出禁止を守れない、医療従事者や職員の中に無症状病原体保有者が紛れていれば、福祉施設や医療機関などで、集団感染が起こりうるため、仮にそれ以外の人々すべてが。外出禁止を続けていても、患者発生をゼロにすることはできず、完全には収束できない。

その意味でも、外出禁止にするかわりに、『マスクを外すときに手洗いをし、マスクを装着してから手洗いをする』を義務づければ、陽性者であれ、未感染者であれ、ウイルスをうつすことがないので、COVID-19を収束させる可能性がある。

 

8. まとめ

今後、少しでもCOVID-19を収束できるように持って行くには、人からうつされないため、人にうつさないために、『人と接触するときは、必ずマスクをつけ、顔を触ったり、飲食するときには、マスクを外して手を洗う』ことを習慣づける必要がある。アルコール消毒も効果がある。スマホの画面もアルコールできれいにしたほうがよい。食事をする場所は、エアロゾル感染が起こらないように、換気と乾燥に留意する。ある意味、陽性者は、上記約束が守れなかった証しであり、非感染者は、上記約束を守り、体内にウイルスを持ち込まなかった人である。

なお、マスクは必須ではないが、咳エチケットだけは守るべきである。咳エチケットとは、感染症を他者に感染させないために、咳・くしゃみをする際、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖、肘の内側などを使って、口や鼻をおさえることである。これにより、飛沫感染やエアロゾル感染を抑えることができる。マスクをしない場合、『人と接触するときは、2m以上の間隔をおく。できれば、手洗いをする。顔を触ったり、飲食するときには、必ず手を洗う』。この約束を守ることにより、マスクをしなくても、ウイルスを人にうつさないし、人からもうつされないはずである。

これらわたしの意見をご理解いただければ、ぜひ、実践していただきたい。本論文が、COVID-19の感染の収束の一助になれば、望外の喜びである。

 

 

参考文献

1) 白木公康、木場隼人:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察.日本医事新報, 5004:30-37,2020-03-21 

2) 朝日新聞 新型コロナウイルス感染症 関連記事

3) 厚生労働省:”新型コロナウイルス感染症について“.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

4) 新型コロナ、空中で数時間生存 米研究所が警告.ロイター ワールド,2020-03-18, https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-study-idJPKBN214400

 

 

COVID-19が新型インフルエンザになる日

黒木 尚長(千葉科学大学 危機管理学部)

 

1.新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の出現

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、思わぬ形でニュースとしてやってきた。ネットニュースでは、新年を迎える2時間前のことで、『中国・武漢で原因不明の肺炎 海鮮市場の店主ら多数発症』という記事であった。27人の症例が確認され、うち7人が重体という。仮にSARS(重症急性呼吸器症候群)だとしても、治療システムは確立しており、パニックに陥る必要はないとの現地医師の談話も記載されていた。当時は、また、SARSみたいになったら、大変だなあと思うだけで気にも留めなかった。

 

2.記事の見逃しが原因不明の肺炎を拡大した

正月明けの1月8日には、『中国・武漢、原因不明の肺炎 患者50人超、香港でも症状』の記事が朝日新聞朝刊31面に掲載された。全文を以下に示す。

『中国中部の湖北省武漢市で原因不明のウイルス性肺炎患者が増えている。地元当局によると、これまでに59人の患者が確認され、うち7人が重症という。過去に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)などの可能性は「排除された」としており、原因の特定を急いでいる。香港政府も7日、武漢を訪れた計30人に発熱や肺炎の症状が出たと発表した。

地元当局によると、最初に患者が見つかったのは昨年12月12日。市中心部にある海鮮市場「華南海鮮城」関係者の感染が目立つ。同市場は当局の指示で一時閉鎖となった。当局は「ヒトからヒトへの感染は報告されていない」としている。

感染拡大を受け、香港政府は武漢からの航空機や高速鉄道の乗客への体温測定などを強化。過去2週間以内に武漢を訪れ、発熱や肺炎などの症状が出た計30人の患者を確認したという。台湾当局も6日、専門家を現地に派遣する計画を発表した。

厚生労働省によると、7日の時点で国内で同様の患者の報告はないという。だが、武漢には日本企業が進出し、日本との直行便もある。多くの人が行き来していることから、引き続き中国当局などを通じて情報収集するとしている。

厚労省は武漢から帰国・入国した人で、せきや熱などの症状がある場合にはマスクを着け医療機関に受診するよう呼びかけている。』

つまり、「人から人への強い感染」が起こり、しかも潜伏期が2週間近いことが読める。1つの記事の中に、「ヒトからヒトへの感染は報告されていない」と「ヒトからヒトへの強い感染は強く疑われる」が混在しているのである。そのことに誰も気づかなかったことが悔やまれる。

 本来は、12月下旬に武漢市を封鎖するとか、患者の動向を完全に把握されていれば、パンデミックは避けられたのかもしれないが、この時点で、全世界パンデミックのスイッチが押されてしまったのである。

 

3.WHOがアシストした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界流行

 1月9日になると中国メディアは、肺炎患者からコロナウイルスが確認されたと報道された。12日には遺伝子の配列情報がわかり公開され、SARS-CoVに近い配列であることがわかった。2002年11月から2003年7月にかけてSARS(重症急性呼吸器症候群)が人から人への強い接触感染・飛沫感染で伝播したことを踏まえれば、ヒトからヒトへ感染しないと言い張るのもいかがなものかと考える。

 15日には、タイや日本で武漢市から来た中国人男性の感染が確認された。人から人への感染はないと言われていたが、日本の感染症専門家は、もし人から人に感染するとしても家族など身近に接する人同士に限られ、それほど感染は広がらないとみている。感染を防ぐには、よく手洗いをすることが基本とされていた。しかしながら、日本では、マスクの着用は励行されていたが、手洗いについては、あまり言及されておらず、新たに手洗いをきちんとするようになった人を知らない。

24日の時点では、COVID-19による中国での感染者は830名、死亡者25名で、タイでの感染者は4名、日本での感染者は2名で、少なくとも日本の濃厚接触者はすべて特定されていた。WHOは、「中国国外での人から人への感染が確認されておらず、時期尚早だ」という、訳のわからない論理で、緊急事態宣言を見送った。中国では「人から人への強い感染」があるからこそ感染者が急激に増加しているのに、WHOは同じ病態なのに国外では「人から人への感染がない」と判断したのである。ここで緊急事態宣言が行われていれば、少なくとも全世界に広まることは避けられたと思われる。

中国は、23日に武漢封鎖を行い、25日には、異例の党最高指導部会議を開き、撲滅に向けた徹底対応の号令をかけた。26日になって中国の国歌衛生当局は、武漢市の海鮮市場から大量の新型コロナウイルスが検出されたとし、市場で売られていた野生動物が感染源とみられると述べた。

 

4.遅すぎたWHOの緊急事態宣言

1月末では、国内の発生状況は1週間で2名から12名に急増したが、濃厚接触者も判明し、ほとんどで感染源が特定されていた。しかし、その前日に武漢市からのチャーター便により帰国された邦人で2名の無症状病原体保有者が確認された。このことは、極めて重大である。新型コロナウイルスは、無症状病原体保有者を介して人から人への強い感染力で、感染源不明のCOVID-19感染者を生み出すことになり、封じ込めが極めて困難になり、COVID-19が蔓延することを意味する。感染源不明のCOVID-19をどれだけ少なくできるかが喫緊の課題であり、できるかぎりゼロに近づけないと感染が抑えきれなくなる。一般に細菌やウイルスでは、無症状病原体保有者は少なくないとされ、COVID-19がそうであっても特別なことではない。

その日の未明にWHOは、前回見送った、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。その背景には、武漢市への渡航歴がない日本人から感染が見つかったことで、日本国内で二次感染が広がっていることが影響しており、人から人へ感染した数は比較的少ないものの、感染がはるかに大きく拡がる可能性があるためという。無症状病原体保有者の存在も大きいと思われる。時期すでに遅しである。

 この時点で、ほとんどの医師は、無症状病原体保有者がいる限り、制御不能と考えていた。ただ、発症した患者について、原因を丁寧に特定する操作ができれば、なんとかなる可能性もあるとも考えていた。治療薬もそれなりにあることは知っていたので、また、いずれワクチンができると知っていたので、COVID-19が新型インフルエンザになってしまうことを前提に共存して社会活動を行うのも仕方がないのではないかと考えていた。この考え方をしている医師や専門家は少なくないと思っているが、世間、経済界、政府の反応は全く異なっていた。安全、安心な状態でないと、イベントなどは全くできないし、感染を広げてしまう。あくまでも、COVID-19が一掃されない限り、明日はないという考え方であった。

今後、感染者が指数関数的に増加することは、容易に予想された。それをどのような方法で制御できるかが喫緊の課題であった。

31日には、政府が感染症法上の指定感染症に指定する政令の施行日を6日間前倒しし、2月1日に施行された。

 

5.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の現状

 2019年度も終わりを迎えた3月下旬になってから、COVID-19の動きが止まらない。今、世界中をパンデミックに陥れ、リーマンショックを越える経済危機に直面している。欧米を中心にロックダウン(都市封鎖)の動きが広がっているが、収束がみえてこない。

 3月25日現在、国内で今般の新型コロナウイルスに関連した感染症の感染者は1,193例で、内訳は、患者1,055例、無症状病原体保有者130例、陽性確定例(症状有無確認中)8例で、国内の死亡者は43名であった。一方、国外の発生状況は、患者数は415,757名で、死亡者は18,351名と著しい増加を続けた。

 これまでは、日本だけがCOVID-19を克服できる国だと思い込んでいたが、最近の都市部の患者急増で怪しくなってきた。このままだと、日本でも欧米のように爆発的に患者が急増し、医療崩壊が本当に起こるのではと本当に危惧している。

 

6.2月下旬での未来予想図

 パンデミックにより、リーマンショック以上の金融危機が訪れ、世界経済が崩壊するのではと考えたのは2月24日のことであった。2月20日にはロンドンでの代替開催案が英国で出始め、その後も患者が急増する中、海外メディアは東京五輪中止を想定しはじめた時期であった。24日よりアジア発の株安が欧米に波及し、休日明けの25日には日本でも3.3%株価が下がる事態となった。24日の時点で国内の感染者は、患者125例、無症状病原体保有者16例だったのが、25日には患者156例、無症状病原体保有者16例と1日に30名も急増していた。同日、専門家会議は、「これから1~2週間が(感染の)急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」で山場だとする見解を公表した。そのため、対面で長時間会話するのを避けたり、風邪や発熱があっても症状が軽い場合はいきなり医療機関を受診するのではなく、外出を避けて自宅療養したりすることなどを求めた。

 

7.2月下旬の政府の対応

 26日には安倍晋三首相は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、多数の観客が集まる国内のスポーツ・文化イベントの開催を今後2週間自粛するよう、催しの主催者らに要請した。

27日には、安倍晋三首相は27日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、全国すべての小中高校と特別支援学校について、3月2日から春休みに入るまで臨時休校するよう要請した。

 

8.2月下旬の政府対応の効果を反映した3月

 このように、その時点では、やりすぎとも思えるような新型コロナウイルス対策を政府が行ったことで、正直、2週間から3週間後にはCOVID-19が収束するものと信じていた。

しかしながら、世界の状況は一変し、3月11日(ジュネーブ時間)に世界保健機関(WHO)は世界的な流行を意味する「パンデミック」の状態だと認定した。11日の時点で国内の感染者は、患者504例、無症状病原体保有者64例、死亡者は12名であった。欧米では、イタリア、イランを中心に患者は加速度的に増加し、ドイツ、アメリカ、フランス、スペインも例外ではなかった。

 14日には、新型コロナウイルスを新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に加える改正法が成立し、新型コロナの蔓延時などに、首相が「緊急事態宣言」を出し、国民の私権制限もできるようになった。同時に、安倍首相は今夏の東京五輪・パラリンピックは予定通りの開催を目指す考えも示した。17日には、欧州連合(EU)加盟国首脳は感染拡大を防ぐため、第三国の人々のEUへの渡航を30日間制限することを正式に決めた。18日には新型コロナウイルスの感染者数が世界累計で20万人を超えた。19日、政府の専門家会議は国内の状況や今後の対策のあり方の見解を公表した。感染の広がりについて「持ちこたえているが、一部の地域で拡大が見られる」と分析。大規模イベントの実施については、「感染拡大のリスクがあると言わざるをえない」として、リスクへの対応が整わない場合は中止や延期の必要があるとした。

20~22日の三連休が明けた。23日、日本では感染がコントロールできる可能性はあるが、海外がパンデミックの状態にあることをふまえ、安倍晋三首相も参院予算委員会で五輪・パラリンピックについて「完全な形での実施が困難な場合、延期の判断も行わざるを得ない」と言及した。24日夜には、東京五輪・パラリンピックの開催をめぐり、安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が電話で協議し、1年程度の延期を検討することで合意した。

 

9.3月下旬での未来予想図

COVID-19が世界中に蔓延し、何をやっても制御できないと確信したのは、東京都内で患者が急増した3月24日のことであった。COVID-19を新型インフルエンザのような流行性感染症として認知した上で、今後は、新型コロナウイルスが至る所に付着していることを前提に社会経済活動をして行かざるを得ないと考えた。

いよいよ、今後は、日本も爆発的に患者が急増するフェーズを迎えたといわざるをえない。一方、患者を制御する政策は、ほとんどないという現実に直面しつつある。東京などの大都市の閉鎖を行ったとしても、欧米諸国の都市封鎖などの対策に準じたとしても、いずれの地域も制御できないのではと感じている。このまま、世界はどうなってしまうのだろうか。

 

10. COVID-19感染制御の現状

 中国国家衛生健康委の発表によると、中国湖北省で3月5日に新たに確認された新型コロナウイルスの感染者数は126人となったが、全員が武漢市だった。湖北省の新規感染者が武漢市を除いてゼロとなるのは初めてとのこと。3月24日には中国湖北省の政府は感染拡大を封じ込めるため1月23日から実施していた同省武漢市の封鎖措置を4月8日に解除すると発表した。

 中国でどのような方法でウイルスの封じ込めに成功したかは明らかでないが、全国民において、感染症トリアージが行われた上で、アビガンを使用した徹底的な治療が行われているようである。また、この感染者数については、新型コロナウイルスについて陽性と判定されても、入院していない人や症状の出ていない人は、感染者に数えていないと認めており、これで本当にウイルスの封じ込めに成功したといえるのかは若干疑問を感じるが、中国への渡航者がウイルスを持ち込むのはやむを得ないことであり、その意味では、沈静化に一定のめどが付いたと判断できる。

 日本の場合、DNAワクチンは治験前の状況ではあるがほぼできあがっており、中国で使用されたアビガンは日本発の薬である。また、COVID-19による重症肺炎に対する治療は、人工呼吸器を使用しても呼吸状態の改善がみられなければ、ECMO(体外式膜型人工肺)が使用されているが、アビガンは治験を除いては、治療薬と認定されておらず、使用できない現状にある。

 

11.感染制御のための提言

現状では、社会経済活動を続けながら、長期間の都市封鎖や外出禁止を行うのは不可能であり、外出禁止にできない例外の医療従事者や職員に無症状病原体保有者が紛れたため、医療機関、福祉施設で院内感染が多発し、陽性者が大量に発生している。

政府は、『手洗い、咳エチケットなどを徹底し、風邪症状があれば、外出を控えていただき、やむを得ず、外出される場合にはマスクを着用していただくよう、お願いする。』としているが、それが完全に徹底されていれば、患者が爆発的に増えるはずもなく、徹底されないことに問題があるように思われる。一見、都市封鎖・外出禁止を法的に行うことが、感染収束に導きそうに思われるが、足並みがそろわなかったり、前述した、院内感染の増大が起こるなど、相当努力しても、感染を収束できない可能性が高いと感じている。

 ぜひ、「人と接触するときは必ずマスクをつけ、マスクを外すときにも必ず手を洗う」ことをすべての人に徹底していただきたい。それができていない人だけが、陽性者になるのである。それができていれば、まず、感染症にならない。つまり、それだけで、COVID-19の感染制御できて、収束させる可能性が高いのではと考えている。

 COVID-19は,感染者の20%が重症肺炎となり2%が死に至る感染症であり、発症6日までにアビガンで治療できるようにすべきである。COVID-19の診療ガイドラインを作成し、そこに、アビガンの投与、人工呼吸器装着、ECMOについて言及するようにすべきである。アビガンの構造式をみただけで、すべてのRNAウイルスに効果があることがわかるのだから、積極的に使用できるようにしなければいけない。アビガンを開始すれば,ウイルスの早期消失,咳嗽の軽減,肺炎の進行や重症化が阻止され,それにより死亡率が激減するであろう。現在開発中のDNAワクチンも外出禁止の対象にできない医療従事者などに積極的に使用できるようにすべきである。

アビガンは新規の感染細胞に有効なので、可能であるなら、発症したらすぐにアビガンを使用するという方法で確実に患者を治療できると感じている。中国での感染制御の詳細は明らかになっていないが、相当早期にアビガンを使用するという手段で感染を制圧したのかもしれない。

 

参考文献

1) 白木公康、木場隼人:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察.日本医事新報, 5004:30-37,2020-03-21 

2) 白木公康:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療候補薬アビガンの特徴.日本医事新報, 5005:25-32,2020-03-28

3) 朝日新聞 新型コロナウイルス感染症 関連記事

4) 厚生労働省:”新型コロナウイルス感染症について“.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

 

 

総合危機管理学会からのお知らせ

【分科会活動について】   (仮称)用語検討分科会第1回会合報告

 

  第7回Simric通信でお知らせした危機管理用語を論じる会合が有志により行われた。

  総合危機管理学会では危機管理に立ち向かう次世代の人材育成を目的としており、専門家ではない若者にもわかる用語、誤解のない用語利用が欠かせないということに意見が一致した。そのためには、人文・社会、生命科学、教育、理学・工学、農・環境など幅広い分野で使われている危機管理用語を整理することが求められる。

 具体的な分科会活動は理事会審議以降となるが、参加を希望する委員を募集致したい。

まずは、危機管理に関する用語を説明した辞書や事典を参考とするため、日本において発行された資料について検索作業を進めている。しかし、海外の資料については手つかずである。会員の中で、海外で発行された危機管理用語の文献をご存じの方は、事務局まで是非ご一報いただきたい。

なお、会合は2020年3月12日千葉科学大学東京サテライト教室で行った。

(文責:常務委員 嶋村宗正)

以下に、会議席上で示された「(仮称)用語検討文科会の設立目的について」を示す。

 

(仮称)用語検討分科会の設立目的について

 総合危機管理学会の目的は、「持続可能な社会を構築するため、あらゆる種類の危機管理に立ち向かう次世代の人材の育成を目的とする。小・中学校、高等学校、大学、官公庁及び企業などに所属する個人またはそれぞれの機関、団体に対し、必要な総合的危機管理学を教育し、研究する学術団体として活動する。これにより会員相互の資質の向上を図る。」とある。

 我が国における危機管理は、行政に任せる意識が強く、ひとり一人の意識にその必要性が感じられてきたのはごく近年になってからといってもよいであろう。この危機管理の概念については、権利意識のつよい欧米で発達しており、したがって、我が国においても欧米の思想を受け継いでいると言える。その分、危機管理を解説するにあたっては、外国語を多用せざるを得ない状況となっている。

 また、危機管理といったときに、被害の程度、効果・効率などの概念は必要である。これらの概念を利用するためには、障害や傷害の発生頻度、経済的な利益や損失など数値的な評価が欠かせない。これら数値あるいは数学的な要素が入ったとたんに混乱する人々も多く、受け入れられやすい環境を構築することも大きな課題である。

 このため、総合危機管理学会が目指す日本語で危機管理を定着させるためには、危機管理で使用している言葉が全ての人に、わかりやすく、かつ共通の認識を与えるものでなければならないし、そうでなければ若者に危機管理を定着させることはできないといえる。

 総合危機管理学会は、人文・社会、生命科学、教育、理学・工学、農・環境

など幅広い分野を対象としている。したがって、この分科会では、一つの用語について全ての分野の人々が共通の理解を持つことができるように用語の利用方法について明確な指針を提案することをこの会の目的としたい。                         以上

 

 

 

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